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特別対談出展作家に聞く“アートの喜び”
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INTERVIEW #2若き陶芸作家が
目指す“共感”と“謎”

小林佐和子(陶芸家)×平岡智((株)三越伊勢丹 工芸・西洋装飾美術担当バイヤー)

高度な技法による新鮮な陶芸が、
学生時代に完売

小林日本橋三越本店で個展を開かせていただいたりしてきましたが、平岡さんに私の作品を見ていただけるようになったのは、何がきっかけだったんですか?

平岡日本橋三越本店での杜窯会(東京藝術大学陶芸講座の在学生、卒業生による作陶展)が最初でした。完売している作家さんがいらっしゃるというので改めて見に行ったんです。この先生にはいつか必ず三越で個展をやってほしい、と思いましたね。

小林杜窯会には大学4年から去年まで9回参加したのですが、最初は全然売れなかったんですよ、私の作品。練込(色の違う土を貼り合わせて模様を作る技法)の面白さがなかなか伝わらず、3年目くらいから説明のボードを置き始めたら、ちょっとずつお客さんが増えていきました。

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平岡先生は、最初から陶芸の道を目指されていたのですか。

小林藝大入学当初はガラス工芸がやりたかったんです。子どもの頃に小樽の美術館で見た、ベネチアガラスの「ミルフィオリ」という伝統技法を使って、新しい見たこともないような作品を作りたいと思っていたんです。

平岡工芸の高度な技術に、もともと関心がおありだったのですね。陶芸を専攻されてからも、練込、彩層(層状に重なった色の違う土を掘り下げて模様を作る技法)など高度な技術に取り組んでこられました。
そしてもうひとつ小林先生の作品の特徴として、現実的な描写と非現実的な形態を組み合わせた表現があります。

小林作品を見ていただくには、誰もが共感できる部分が必要だと思うのです。見る人がスッと入っていける現実的な部分と、それとは別の"謎"の部分が共存している作品が理想です。

平岡動物のモチーフや楽しい人間味のある部分、空想的な部分が作品の中に必ずありますね。どういうところから発想するのですか。

小林ものによって違います。本も読みますし、私は漫画が好きでそこからヒントを頂くこともあります。最近は一種日本独特なアニメのデフォルメのやり方と、工芸の技術を融合させて、立体として表現できれば素敵なんじゃないかなって思っているんです。

作品を通して、
顔も知らない人とつながれる

平岡小林先生はご自身の展覧会場にいらして下さることがすごく多いですね。お客様とお話しされるなかで、言われてうれしかったことや転機になった言葉はありますか。

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小林私はどんなことでも、ひと言何か言ってくださるとすごくうれしいし、厳しいご意見をいただいてもそれもまた勉強になります。
特に印象に残っているのが大学院の修了制作の展示会です。2mほどの大きな孔雀の陶芸作品を作ったのですが、会場のノートに「(作品を見て)気分が良くなりました」と書かれていたのに感激しました。
私は私のためだけに制作したのに、そんなことを思っていただけたなんて……。転機というと大げさかもしれませんが、そのときから意識が外に向くようになりました。私は話下手なのですが、作品を通して顔も知らない人とつながれることに気付いたんです。

平岡その方とは会えたのですか。

小林ノートに住所も書いて下さったので、次の展示会にお越しいただいてお話しさせていただくことができました。

平岡買う、買わないとは別に、展覧会でのそうした出会いは長く続いていくものですよね。そして小林先生は学生時代から毎回買ってくださるファンも多く、この前の個展も完売でした。

小林そんな方がいらっしゃるからこそ、前回よりも一段階向上した作品、技術の上がったところを見せないといけませんし、やりがいになります。

平岡技術的には今でも高いところにきていると思いますが、次の展開はどうしますか。

小林やりたいことはいっぱいありますが、陶芸には失敗がつきもの。土を変えると割れてしまうこともある。新しい釉薬を作ったら失敗する。その繰り返しなので、失敗を楽しんで一つひとつ改良を加えていきます。これまでの練込や彩層による路線に加えて、絵付けなど幅を増やせたらいいなって。

平岡どんどん違うことにチャレンジして、新しい世界を見せていただけるということですね。ファンの方も期待していると思います。

共感から感動を
広げていきたい

平岡日本橋三越本店ができた110年前と比べると、日本人にもアートが身近になりましたよね。一方で生活のなかで気楽に楽しむ……というまでには、まだハードルがあるようにも思えます。先生はどうみていますか。

小林ゲーム、アニメ、漫画は生活のなかに入り込み、目にしない日はありません。工芸も同じように、生活の中に入り込んでいけないでしょうか。食器だけではなく、気軽に手作りのものが受け入れられるようになるといいですよね。

平岡先日ある場所で、いわゆる生活工芸と美術の境目はどこですか?と聞かれたんです。例えば百貨店でもリビングの食器と美術としての工芸品は、扱うフロアも品目も違いますね。でも一般の方には差がよくわからない。私は、作品の中に意志が込められているものがアートなんじゃないかと、そのときは答えたのですが。

小林そうですよね。私もまったく同感です。

平岡小林先生の作品のように、作者の意図が伝わり、共感してもらいやすい作品が増えることが大切ですね。そうすれば、美術は生活空間にもっと広がってくれるでしょう。

小林私は作品を見た方が「あら芸術ね!」とおっしゃるのは、「よく分からないわ」という意味だと受け止めます。それよりも単純に「わあ、かわいい」「きれい」と共感してもらえる作品を作りたいです。社会に広く届くように、共感できる部分とミステリアスな謎の部分を、これからも大切にしていきたいと思います。私自身の活動を通じて、工芸をよく知らなかったという方に興味を持っていただける、その一端を担えればうれしいですね。

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平岡そして8月30日から、いよいよHOPESが開幕するわけです。

小林私は一般家庭で育って、「窯元の何代目」という作家ではありません。伝統的な陶芸の魅力とは異なる新しいスタイルが持ち味だと思っていますし、他の先生方も一人ひとりの表現があります。力作揃いの展覧会ですので、1人でも多くの方にご覧いただけたらうれしいですね。

平岡「三越の美術」を挙げて、次の世代を担う期待の作家を選んで、自信を持ってご紹介させていただきます。何かしらの発見や感動にきっと出合えると思いますので、このページをご覧の皆さまもぜひご来場ください。

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小林佐和子(陶芸家)
1984年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院修了(博士号取得)。着色した磁土を組み合わせ成形する「練込」、層状になった着色した磁土を掘って表現する「彩層」などの高度な技法を持ち味とする。動植物をモチーフとした、カラフルで独創的な立体作品、うつわなど幅広い陶芸作品を手掛けている。
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