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特別対談出展作家に聞く“アートの喜び”
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INTERVIEW #1日常感覚の延長線上に
見出す新しいアート

中島健太(洋画家)×成田亜由美((株)三越伊勢丹 洋画・彫刻担当バイヤー)

「ご縁」がつないだ
作家とバイヤーの出会い

成田中島先生と初めてお会いしたのは古吉弘先生(洋画家)のご紹介でしたね。ロンドンのオークションハウス、クリスティーズをはじめ、海外でとても人気がある作家です。その古吉先生から「絵描き仲間ですごくうまい青年がいるから、会ってみない?」と言われたのが始まりでした。

中島僕が美大3年生のとき、古吉先生が偶然にもSNSで僕の作品を見つけてくださったんです。それ以来お世話になっていて、卒業するタイミングで成田さんにご紹介いただきました。

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成田バイヤーとしても、作家の先生方からのご紹介は“盤石”で間違いがありません。特に古吉先生のような方が「ぜひ」とおっしゃるのならまず大丈夫だろうという気持ちでした。実際にお会いして、作品のレベルはもちろん、お人柄が10年、20年と、長く活躍される方だとまず感じたのを憶えています。絵を購入されるお客様にも安心してご紹介できると思いました。

中島そして翌2009年に日本橋三越本店の美術フロアで個展をさせていただく大きな経験ができました。24歳という若い年齢で、なかなかないことですよね。古吉先生にSNSで発見していただいたことをはじめ、運やご縁に助けられてきました。

成田作家と、バイヤーと、お客様と……。中島先生は人と人の関係を大事にされているといつも感じます。

中島それから10年。この間に500点ほど制作したことになりますが、その数字はただの作品点数ではないと思うようになりました。500回のご縁があったからこそ501点目、502点目と描き続けることができる。人と人の縁の中で、自分が生かされている。そのことが自分自身の中にしみこんできた感覚です。

日展特選を機に生まれた
「責任感」

成田私は10年間作品を拝見してきて、人物画の中に自然体でありながら透明感、さわやかさ、清潔感がしっかり出ているのはデビューの頃から変わらないように感じます。1本筋が通ったうえで、作家として積み重ねられてきたわけですが、原点は……。

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中島美大入学直後に父が他界しました。学費と生活費を稼ぐ必要があったので、夕方に大学が終わると、午前3時まで六本木のバーテンダーとして働いていたんです。寝る場所は閉店後のバーのソファと始発電車だけでした。そんな生活が半年続いた頃にキャリアをスタートする最初のきっかけをつかむことができました。
当時は一日も早くプロの作家になりたい、何が何でも絵で生活できるようになりたいという気持ちが一番でした。だからこそチャンスをつかめたし、作家として成長してこられたのだと思っています。

成田一番の転機はいつでしたか?

中島2009年、日本最大規模の公募展である日展で、初出品で特選を頂いたときです。作家は「個にこもる」仕事で、ともすれば「好き勝手に何でもやればいい」と思いがちだし、それを求められもします。でも若い自分が特選をいただいて注目され、多くの方に作品を見ていただけるようになり考えが変わりました。
先輩方が長い歴史のなかで日展の価値を確かなものにしてきたという事実のうえではじめて、僕に注目していただけたのだと思うんです。そういう意味で、自分の作品が美術史の一部になったと思えた瞬間ですし、日本の美術界に対して、責任感を持って取り組まなければならないと考えるようになりました。

HOPES展で、
新たな出会いの広がりを

成田さて、成熟期を迎えた日本社会ではさまざまな変化が起こっていますが、美術はどう変わっていくと思いますか。

中島最近はメジャーな観光地に行くと、必ず外国の方がいます。それも多様な国、言語の方々が入り交じっていますよね。日本の文化はそれだけ世界的に注目されているし、人気があることを日本人はようやく自覚し始めたのではないでしょうか。作り手としては、日本文化をいっそう謙虚に学んで、取り入れ、美術史の文脈に新たなページを加えていきたいと。
今までの日本のアートは村上隆先生、草間彌生先生、奈良美智先生など、海外で日本人のパーソナリティを主張して評価された方々を、逆輸入するようにして後追いで認めてきました。これからはむしろ、日本の内発性に芽があるのではないでしょうか。日本人の日常的な身体感覚の延長線上にあると感じられるような作品作りを、われわれの世代がやっていかなければいけませんね。

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成田日常生活の延長、というのは素晴らしい着眼点ですね。お話ししていても、先生は本当に自然なものを描こうとされている。中島先生は作品のタイトルも、ふとした瞬間に浮かんだ言葉をすくい取ったような、さわやかなタイトルを付けられますね。

中島作品を見ていただくために間口を広げていきたいんです。タイトルは見る方と作品をつなぐものですから、どこか余韻があったり、想像力をかき立てたりするものになるよう意識しています。

成田中島先生は日本らしさを消化したうえで、自由で間口の広い作品づくりを目指されているというわけですね。私もアートに携わりながら、日本の家庭でも自宅に帰ると――高い絵画や大きな作品でなくとも――1枚お気に入りのアーティストの作品が飾ってあるような世界が、もっと身近になれば素敵だと思っています。
そして実際に、アートの世界に興味を持っている方々や、これから足を踏み入れたいという方はたくさんいらっしゃいます。作品を選ぶコツはありますか?

中島日本の美術は想像以上に面白く、懐が深い世界です。多彩な作品がありますので、必ず自分が気に入る作品に出会えます。たくさんの作品のなかから「世界的に評価されているから良い」ではなく、まずは「自分はこれが好き」という素直な気持ちを言葉にしてみてください。例えば三越の美術部には、どなたも好きなものに出会えるだけの幅広い作品が揃っていると思います。

成田今回開催されるHOPES展は三越のバイヤーがあちこちに足を運び、たくさんの出会いを重ねてきた作家さんたちの発表の場です。工芸、日本画、洋画、彫刻……さまざまなジャンルの先生方が心血を注いだ傑作ばかりですので、お気に入りの作品を見付けていただければ、お客様にとっても最高の出会いになりますよね。そしてその先生はどんな人なんだろう、どんな作品を作り続けるのだろうと追いかけていくと、興味が広がり人生がより豊かに楽しめるのではないでしょうか。

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中島 健太(洋画家)
大学在学中よりプロのキャリアをスタートし、大学卒業直後の2008年に開催された個展で全作品を売り切る完売を記録、一躍美術界にその名前を知られる。2009年には日本最大の公募展「日展」で初出品初入選でグランプリに相当する特選を受賞。2010年、2015年には日本橋三越本店での個展を成功させている。
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